雪に色がなかった頃のお話

  雪待草のお話


遥か昔 黒い雪 暗く凍てつきし絶望で

永久にあきらめるしかなかった

たどり着いた春の吐息も 吹雪が蹴散らし

静かに口つぐませ すぐ消えた

凍る地 いまだ難く

縮む木 痺れ痛む

だけども心ある雪 疎外されてる身を

悲しみ 嘆く

黒雪は思いたつ、愛の得方

明るい色をまとおう 花のように

地の下で凍える 花たちに せがむ

だれか私に 色ください

だれも 無視し だれも 耳ふさぐ

小さな 白い花 微笑 声返した


輝く涙の 雫を飲んで

私に あなたの色 染みわたる

おもおもしいだけの 冬は見違えて

ほころぶ雪は ありがとう

これからあなたを咲かすためだけに

北風から 守り 覆う

待雪草 チリンと微笑んで

誰もがやっと春めいた